派遣法改正の成立と実情のかい離した現実

私も自分の中で描いている人生像がありますが、現実に目を向けてみると随分かい離しておりました。世の中はかい離のオンパレードです。

さて、既にテレビやニュースでも放送されているように改正派遣法が国会で成立しました。

派遣法の改正で変わる?IT業界

改正派遣法が国会成立、9月30日施行が確定に
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/091102955/?top_nhl

経済界の方々と安倍さんは何が何でも押し通すって姿勢だったので結果としては予定通りですね。そこはまあ今回は置いておきます。改正派遣法が成立したことで色々業界も変わっていくんじゃないか説はありますが、色々とその方面にお話を聞いてみるとちょっと意外な反応がありました。その辺と個人的な見解も交えて書いてみます。前回書いた記事もお時間があればどうぞー。

過去の関連記事

IT業界が激変する(かもしれない)派遣法改正(2015年7月7日)

派遣法改正に伴う7つの想定と問題

上記の記事でも書いてあるようにITが激変するきっかけなのは確かです。実際問題ITの業界構造も色々と問題があって、エンジニアの皆さんから不満たらたらのディスられ過ぎてネタにしかなってない現状です。なのでポジティブに考えれば、今回をきっかけにIT業界もより良い構造改革が起きていけばいいじゃないというのが個人的な想いではありますが、現状あんまりそんな感じは見られません。
一つ一つポイントごとに挙げてみます。

3年経ったら正社員になる機会が増えるはウソ

メディアで良く取り上げられる「3年間同じ就業先で勤務を続ければ正社員への道が開かれる」というお話。これはあくまで契約社員などとして登録をしている人たちを指しているものであって、このIT業界では正社員として企業に属していながら、客先に常駐しているという状況です(※もちろん派遣、フリーランスの方も多くいますが、ここでは中小企業に正社員として雇用されている方を中心とします)。そもそも現時点で正社員なので、この法律自体が適用されるのかどうかがなんかあいまいなところがあってなんともいえないのですが…。その辺はともかくとして3年後に客先で雇用してもらえる機会が作れるということでいうのであれば、基本的には機会はごくわずかではないと思います。そもそもとして顧客は一時的な労働力や技術力が欲しくてアウトソーシングをしています。常時雇用はしたくないのです。その背景があるのになぜ雇用をしなければならないのでしょうか?と、考えたらやはりなかなか3年後には正社員として客先で雇用されるというのはハードルの高い話かと思います。能力・評価ともに高く、常時雇用したいという人だけは話が折り合えば実現するかと思いますが、逆にそうであれば所属している中小企業側も引き抜かれたくはないと思うので、3年経つ前に契約ぶった切るとかして阻止しそうですけどね…。結局双方でメリットが見られない残念改正なのです。

派遣法改正の一環である教育強化も形骸化している現実

今回の派遣法改正の一環として派遣元は「キャリアアップ措置を講ずる」必要が発生します。つまり計画的に一人前のエンジニアに育て上げなさいよってことです。現状として統計がないので何とも言えないのですが、中小企業は社外研修に1~3か月程度出すか、社内で同等期間程度に技術教育を施す事をやっているようには感じます。ただ中には教育にお金も時間も掛けない企業はほぼ技術的な教育もなく社外へ出向させているように感じます。そのような企業については今後何らかの教育を施す必要があります。またこの法改正でどの程度までキャリアアップを行うべきかが良く分かりませんが、現状の各社で行われている技術教育もカリキュラムに沿ったことを教えているだけで、それ以上のものはありません。一人前に育て上げるような内容ではない以上、国から求められる条件は満たしていないように感じます。そのように判断されるのであれば、大多数の企業は教育について見直しを迫られます。

IT業界に大きな影響を与える特定派遣の廃止

表立ってメディアに取り上げられるのは派遣会社を主にした話であって、IT業界ってのはまたガラパゴスなのであまり取り上げるものではないようです。我々IT業界もどのような雇用形態であるかはともかくとして、中小企業は顧客先や元請先に出向して業務を担うといった関係性で成り立っているのはご承知の通りです。
エンジニアさんたちにはあまり馴染みはないかもしれませんが、契約形態が「派遣」で契約がされている場合はその為の届出や許可が必要でした。ただ今回の派遣法改正で2種類あった派遣方法であった特定派遣が廃止されます。今後は一般派遣の許可を得ていなければ派遣契約が結べなくなるのですが、特定派遣の場合届出を出すだけで特に条件などはありませんでした。ただ今回一般派遣となってしまうと、会社の資産状況、事務所の広さなど一定の条件を満たさなければならなくなります。まずここを満たせない企業は派遣契約で仕事を担うことができなくなります。特に「純資産2,000万円以上」を保有していなければならないというのは、中小企業にとってはなかなか難しい話であったりします。

今後契約としてどうなるか

ただIT業界の現状として契約形態の部分が随分とあやふやにされています。基本的に認められるのは派遣契約、請負契約は確実に大丈夫ですが、SES契約や委託契約が多く取り交わされており、そもそもこの契約方法が良いのか悪いのか、各先生方によっておっしゃることもまちまちです。なので一応グレーな契約であるなんてことで市場ではまかり通っちゃってます。
コンプライアンス重視という観点でいうのであれば、グレーは一切排除して派遣契約、請負契約を結べる企業とのみ取引をしていくというのがホワイトなお話になります。が、現状として業界的な構造上、コンプライアンス重視のみを気にしているとプロジェクトに必要なエンジニアが集めきれず、現場としてもただでさえ人が足りていない中で、より一層人不足に陥ってしまいます。また元請側としても「これだけの人数のエンジニアを投入するので、これだけ予算が必要です」とお金を引っ張っている以上、何が何でも人を投入もしなければお金ももらえません。もちろん適切な能力を有したエンジニアを見つけ出して現場に入ってもらうように契約をしなければならないので、誰でもいいって話でもありません。
この現状を考えると当面はグレーと言われながらも、多様な形態契約を残しながらIT業界は続いていくのではないかと個人的には思っております。つまりは特定派遣が廃止されても、さほど影響は少ないんじゃないかと…。あるとすれば「特定派遣で派遣をしていて、一般派遣の取得条件を満たさない」場合は何らかの手は打たないといけません。手っ取り早いのは結局グレーを承知で委託契約などの契約を結ぶことになるかなと。
ちなみに現状としてあちらこちらに聞いている情報としては、様子見をしている会社さんが大半です。主導的に何らかを起こそうにも起こせないですしね…。

IT業界の構造改革はSIerやユーザが鍵を握る

では今後IT業界はどうなっていくべきか、現時点である問題が解決するにはどうなればいいのかってことを考えてみました。例はやはり海外、特にアメリカが参考になるかと思っています。
アメリカでもかつては日本のようにピラミッド型の構造になっていたようです。ただ現在はその関係性も崩壊して、フラットな状態になっているようです。
つまりはSIerやユーザ企業が直接的に中小企業からのエンジニア受け入れを行ったり、フリーランスを直接的に雇用しています。またそもそも正社員雇用だとしてもエンジニア自体が流動的な文化があって、一区切りまで仕事を終えると退職して、また別に会社に移るということが日常的に行われています。日本のように終身雇用がまだまだ根強い環境であることがエンジニアの流動性に妨げとなっていて、同じ会社で雇用し続けられる機会が多くなっています。その為に新たなプロジェクトが始まっても、能力が満たしていようがいまいがとりあえずマンパワーで何とかしているのが現状です。ただ結果として良い製品が完成しているかどうかと言われると…。その点が海外とは違うのかもしれません。
今後日本で構造改革を進めてくのであれば、上位としての立場を取る企業は幅広く、会社規模人関係なくエンジニアの受け入れをできる体制作りが不可欠です。そして中小企業、一エンジニア単位では技術力と経験・知識を今まで以上に蓄える努力と教育が必要になります。それらが合わされば、何重にも渡る会社の商流はなくなりますし、作り上げられる商品はより良くなっていくのではないでしょうか。

まあこの辺が一番難しいところなんですけどね…。

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コメント

  1. yamato より:

    初めまして。都内でエンジニアをしています。
    一介の営業からみたit業界に関するblogを前から見たかったので、このようなblogは非常に参考になります。

    エンジニアは視野が狭く、世間知らずになりがちですから。

    • kamei-m より:

      お返事が遅くなっておりました。すいません。
      なかなか営業さんがブログ書いて記事にするって方が少ないですね。エンジニアから見るIT業界と、営業から見るIT業界、経営者から見るIT業界ってのもそれぞれ違うものでして、それぞれの視点で今後も記事にできればと思っています。コメント有難うございました。

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